現代のクリニック経営では、セキュリティを単なる追加コストとして見るのではなく、患者様の健康を守り、事業を継続し、組織の信頼を維持するための中心的な要素として捉える必要があります。
医療現場はさまざまな形でセキュリティに関わるトラブルが発生します。不審者による事件から、ランサムウェア攻撃、物理的な脅威とデジタルの脅威があり、クリニック開業で今後の対策を考える必要があるのです。リスク環境に対応するため、積極的で統合的なセキュリティを考えましょう。小規模なクリニックでは起きない可能性が高いものもありますが、知識を持つことは大事です。クリニックの経営層が直面する多面的な脅威を理解し、セキュリティの基本知識として抑えておく内容をまとめました。
クリニックが直面する具体的な脅威を一つひとつ見ていきます。クリニックに特有のリスクを把握し、包括的なセキュリティ計画を立てていきましょう。
物理的なリスクは、単なる空き巣被害だけではありません。放火や内部関係者による問題など、その種類は多岐にわたります。
クリニックは現金や高価な医療機器、そして規制対象の薬品を保管しているため、犯罪者にとって魅力的な標的と見なされることがあります。被害の内容は、レジからの現金盗難のような単純なものから、特定の高価な薬剤を狙う巧妙な侵入まで様々です。
窃盗の犯人が必ずしも外部の人間とは限らないにも注意が必要です。待合室や病室で、患者やその家族を装った人物による私物の盗難も心配されます。職員による備品や現金、医薬品の内部窃盗も、無視できないリスクとして認識しておく必要があります。
サイバー攻撃は、クリニックの運営を根底から揺るがす可能性があります。ランサムウェアや情報漏洩は、決して他人事ではありません。
医療業界は、世界的に見るとマルウェアの標的になりやすい業界です。ランサムウェア攻撃は、手術や外来診療を含むすべての臨床業務を数カ月にわたって停止させ、壊滅的な被害を生むことがあります。その経済的損失は、多大な復旧費用と、多額の逸失利益という二重の打撃をもたらします。
サプライチェーン攻撃という方法もポピュラーな攻撃方法です。攻撃者は病院そのものを直接狙わず、機器の脆弱性を利用して、取引先の給食事業者のシステムに侵入し、そこを踏み台にして病院のネットワークに侵入しました。外部ネットワークから分離しているから問題ないという訳ではありません。
ランサムウェア攻撃の他にも、多くのサイバー攻撃は機微な患者情報を盗むことを目的としています。フィッシング詐欺から人為的なミスまで、様々な原因による情報漏洩が発生します。盗まれた情報は、ダークウェブで売買されたり、個人情報の不正利用に悪用されたりする恐れがあります。
リスクは外部からだけもたらされるわけではありません。組織内部の人間が原因となる脅威にも目を向ける必要があります。
内部脅威の多くは悪意からではなく、うっかりミスなどから発生します。患者情報が入ったUSBメモリを紛失する、PCをロックせずに席を離れる、フィッシングメールのリンクをクリックしてしまうといった行動が典型例です。一方で、退職した職員がシステムに不正にアクセスして患者データを持ち出す、あるいは在職中の職員が転職先に情報を漏らすといった、悪意のある行為も実際に報告されています。注意が必要です。
また憂慮すべき問題が、職員による患者への暴力です。監督体制や組織文化、内部通報制度などの整備が必要になります。
医療の現場が、時として対立の場に変わってしまうことがあります。患者様による暴力や過度な要求も、深刻なリスクの一つです。
いわゆる「モンスターペイシェント」による問題は深刻化しており、その行動は「ヤブ医者」といった暴言から、医師や看護師への身体的暴力にまで及ぶことがあります。女優が看護師に暴行を加えて逮捕された事件などもあり、対策の必要があります。
すべての対立が暴力的なわけではありません。特別な待遇や診療費の減額などを執拗に要求する行為は、クリニックの資源を消耗させ、職員の士気を低下させます。
医療従事者、特に看護師の献身的な態度は、ストーカー被害の対象となることがあります。対策が難しいところですが、必要に応じて警察への相談なども視野に入れましょう。
これまで見てきた脅威は、それぞれが独立して存在するわけではありません。互いに連鎖し、影響し合っている事柄です。例えば、サーバールームの入退室管理が不十分という物理的なセキュリティの弱点は、マルウェアが物理的に持ち込まれ、デジタル攻撃を引き起こす原因になり得ます。その他、サイバー攻撃によって個人情報が漏洩したことに動揺した患者が、暴力行為に及ぶといった形で、患者関連のリスクにつながる可能性も考えられます。
この相互関連性を理解することは、セキュリティ戦略を立てる上で欠かせません。脅威は、それが物理的なものであってもデジタルなものであっても、組織の最も弱い部分を狙ってきます。個別の対策を点のようにつなぐのではなく、全体を一つの統合されたシステムとして捉える視点が不可欠です。
「内部脅威」という言葉の捉え方も見直す必要があります。単に悪意のある職員だけを指すのではありません。ネットワークに接続された信頼できる外部の取引先も、セキュリティの観点では「内部者」として考えるべきです。取引先のセキュリティ体制は、自院のセキュリティ体制と直結しています。
建物の設計から能動的な技術システムの導入まで、アプローチの工夫で高められるセキュリティについても知っておきましょう。
建物の構造やレイアウトそのものが、セキュリティ機能の一部となり得ます。計画段階からの配慮が、後々のリスクを大きく左右します。
優れたレイアウトは、それ自体がセキュリティ対策になります。患者様が利用するゾーンとスタッフが利用するゾーン、そしてそれぞれの動線を明確に分けることで、関係者以外の立ち入りを制限し、院内の混雑を緩和できます。受付から院内全体を見渡せるクリアな視線を確保し、不審者が隠れるような死角を減らすことも重要です。心療内科などでは、患者様が圧迫感や閉塞感を抱かないよう、対面を避けた座席配置や、明確で障害物のない通路の確保が求められます。
常に物が置かれていない避難経路も必要です。クリニックを新設する際は、避難経路の確保を後付けの要素ではなく、計画の最優先事項として盛り込むべきです。スプリンクラーや排煙設備といった防火設備の設置は、議論の余地なく必須と言えます。
新規の建築や大規模な改修工事を行う際には、窓やドア、錠前などに「防犯性能の高い建物部品(CPマーク付き建材)」を指定することが推奨されます。使用する資材で防犯性能を高めた建物を実現できます。
防犯カメラは、犯罪の抑止、証拠の収集、そしてリアルタイムでの状況把握に欠かせないツールです。設置場所と機種の選定、プライバシーへの配慮が重要になります。
防犯カメラを効果的に活用するためには、設置場所を丁寧に決める必要があります。全ての人の出入りを記録するため、出入口への設置は基本です。受付や待合室では、患者様同士のトラブルや盗難を監視する目的で役立ちます。規制対象の薬品の盗難を抑止・記録するためには、調剤室や薬品保管庫が重要な設置場所です。ITインフラへの不正なアクセスを防ぐために、サーバールームの監視も欠かせません。スタッフ専用通路や更衣室の入口に設置することで、更衣室内部のプライバシーを尊重しつつ、不正な立ち入りや内部犯行を監視できます。
カメラの種類は、その目的と設置場所に応じて選ぶ必要があります。ボックス型やバレット型と呼ばれるカメラは、その存在自体が目立つため、強力な犯罪抑止力として機能します。駐車場などの屋外での使用に向いています。一方でドーム型カメラは威圧感が少なく、撮影されている方向が分かりにくいため、待合室のような屋内で患者様に余計な不安を与えずに監視するのに適しています。
カメラの設置は、患者様とスタッフのプライバシーを侵害しないよう、細心の注意を払わなければなりません。「防犯カメラ作動中」といったステッカーを掲示し、設置の目的(例:防犯目的)を明記することが不可欠です。診察室(特定の目的で患者様から明確な同意を得た場合を除く)、トイレ、更衣室の内部など、プライベートな空間には決して設置してはなりません。録画した映像データに誰が、どのような目的でアクセスできるのか、またその保存期間について厳格な規定を設けることも重要です。
鍵の管理はセキュリティの基本です。物理的な鍵からデジタルなシステムへ移行することで、管理の負担を減らし、セキュリティレベルを高めることができます。
従来型の金属キーは、紛失や複製、退職者からの未返却といった、無視できないリスクを抱えています。スマートロックやデジタルキーといったシステムは、管理者が遠隔でアクセス権を即座に付与したり、剥奪したりすることを可能にします。誰が、いつ、どのドアを開けたかという、改ざんが難しいログを自動的に記録する機能も備わっているため、可能であれば採用したいものです。
薬品保管庫やサーバールーム、カルテ保管室といった、特に厳重な管理が求められるエリアには、ICカードや生体認証(顔、指紋など)の導入が推奨されます。許可された担当者のみが立ち入ることができ、確実な記録(監査証跡)が残ります。顔認証システムは、患者様の受付業務の効率化や、認知症患者様の徘徊防止にも応用することが可能です。
全てのスタッフが、院内の全てのエリアに立ち入る必要はありません。アクセスできる権限は、「知る必要性・立ち入る必要性」の原則に基づき、それぞれの職務に応じて付与されるべきです。
万が一の事態が発生した際、迅速に外部へ助けを求めることができる仕組みは、スタッフを守るための生命線です。
非常通報装置は、スタッフの身を守るための重要な装置です。受付カウンターの下や診察室、またスタッフが携帯するペンダント型など、目立たない場所に設置することがポイントです。大きな警報音を鳴らして侵入者を威嚇するタイプや、警備会社や警察へ音を立てずに直接通報するタイプがあります。ボタンが押されると最も近くにあるカメラの映像が即座に警備センターに送信され、現場の状況を視覚的に伝えるタイプもオススメです。
ワイヤレス式のボタンは、配線の必要がないため設置の自由度が高いという利点があります。スマートフォンアプリや専用のウェアラブル端末は、GPSやBluetooth機能によって位置情報と共に緊急事態を通知できます。
屋外に設置された人感センサー付きのライトや警報ブザーは、侵入者が建物に近づく前にその存在を検知します。光や音で警告することで、犯行を未然に防ぐ効果が期待できます。
サイバー攻撃という抽象的な脅威に対して、必要となる対応や心がけを解説します。
特別な機器を導入しなくても、日々の心がけと基本的な設定で防げる脅威は数多くあります。これらはサイバー防御の土台となる部分です。
パスワードの「三原則」は、長く、複雑で、使い回さないことです。特別な機器を必要としない、第一の防御線として重要な要素となります。ルーターや医療機器に最初から設定されている初期パスワードは、設置後すぐに変更しなければなりません。
攻撃者は、すでに知られているシステムの弱点(脆弱性)を悪用します。OSやアプリケーション(ウイルス対策ソフトの定義ファイルなど)、ネットワーク機器のファームウェアを常に新しい状態に保つことが重要です。院内の機器リストを作成し、更新状況を管理する正式なプロセスを確立しましょう。
ランサムウェア攻撃やハードウェアの故障によるデータ損失に対する最終的な防衛策は、信頼性の高いバックアップです。「3-2-1ルール」という考え方が良い基準になります。これは、データを3つコピーし、2つの異なる種類の媒体に保存し、そのうちの1つは院外のオフライン環境で保管するというものです。バックアップを取得するだけでなく、定期的にそのデータからシステムを復旧できるかテストすることも重要です。
許可されていないUSBメモリや外付けハードディスクは、マルウェア感染の主要な経路となり得ます。使用について、厳しく制限するルールを定める必要があります。
ランサムウェア攻撃は、一般的ともなった攻撃方法です。攻撃を受けることを前提とした、予防、検知、そして復旧の計画が不可欠です。
これまで述べてきた基本的な対策と高度な対策の全てが、ランサムウェアの予防策となります。加えて、職員がフィッシングメールを見分けるための教育訓練が非常に重要です。
もし感染が疑われる事態(ファイルが開けない、身代金を要求する画面が表示されるなど)が発生した場合、最初に行うべきことは、感染の拡大を防ぐために、影響を受けた端末をネットワークから物理的に切り離すことです。具体的には、LANケーブルを抜く、またはWi-Fiをオフにするという行動です。
サイバー攻撃は一種の「災害」です。攻撃が発生する「前」に、事業継続計画(BCP)を策定しておく必要があります。この計画には、システムの復旧優先順位を定めておくことが含まれます。重要な患者ケアを維持するために、どのシステムから優先的に復旧させるか(例:電子カルテ、オーダリング、医事会計)を決めておきます。また、紙ベースでどのように業務を続けるかの具体的な手順も定めておく必要があります。定期的な訓練が不可欠です。
BCPには、明確な連絡体制も盛り込みます。誰が誰に連絡するのか、内部の責任者、ITベンダー、弁護士、保険会社、そして規制当局(厚生労働省、警察)など、関係各所の連絡先を網羅したリストが不可欠です。
患者様の個人情報は、絶対に守らなければならない大切な資産です。システムと厳格なルールによって、情報漏洩のリスクを低減させます。
電子カルテシステム内に、役割に基づいたアクセス制御(RBAC)を実装します。例えば、受付スタッフは患者様の基本情報と予約情報のみ、医師は診療録全体にアクセスできるようにするなど、職務に応じた権限を設定します。アカウントが乗っ取られても、被害の範囲を限定することができる対策です。
システムは、患者記録への全てのアクセス(誰が、何を、いつ見たか)を記録しなければなりません。これらのログを定期的に監査することで、職員が自身の業務に関係のない記録にアクセスするなどの不審な活動を検知できます。これは、内部の不正な閲覧に対する強力な抑止力となります。
コンピュータやサーバーを廃棄する際、単にファイルを削除するだけでは不十分です。データが復元できないことを保証するため、ハードディスクは専門業者による物理的な破壊か、磁気によるデータ消去が必要です。紙のカルテは、シュレッダーで確実に処分します。
患者情報を個人のデバイスや許可されていないクラウドストレージにコピーすることを禁じる厳格な方針を定め、全職員から遵守の署名を得るべきです。患者データに関する全ての作業は、クリニック内の管理された環境で完結させる必要があります。
厚生労働省のガイドラインを遵守することは、効果的な防御策を設計するための方法そのものです。ガイドラインは、過去の失敗を繰り返さないための具体的な手引書として活用しましょう。
テクノロジーは使う人によって有効に機能するかが狩ります。人的なリスクを管理するために必要な教育や方針を関画ておきましょう。
どんなに優れたシステムを導入しても、それを使う人間の意識が低ければ意味がありません。全スタッフを対象とした継続的な教育が不可欠です。
全スタッフを対象とした、定期的かつ参加必須のトレーニングを実施します。一度きりの入職時研修で終わらせず、期間を置いて定期的に行うことがオススメです。フィッシングやソーシャルエンジニアリングへの対策として、不審なメールやリンク、添付ファイルを見分けるための訓練を行います。予告なしのフィッシング模擬訓練を定期的に実施することで、職員の警戒心を測定し、向上させることも可能です。
また、パスワード管理やデータの取り扱い、私物端末の利用(BYOD)に関する院内ルールを、全員が正しく理解しているように取り組みましょう。スタッフが、不審なリンクをクリックしてしまったなどのセキュリティ上の出来事を、懲罰を恐れることなく直ちに報告できる非難しない文化を育むことも重要です。
セキュリティに関する方針を定める際には、厚生労働省が要求する「医療情報システム安全管理責任者」を明確に指定しなければなりません。この責任者は、クリニックのセキュリティプログラム全体の監督責任を担います。
内部からの情報漏洩や不正行為を防ぐためには、性善説だけに頼るのではなく、ルールとシステムによる制御が必要です。
物理的な入退室管理やデジタルなシステムへのアクセスにおいて、従業員は自身の業務を遂行するために必要な最低限のアクセス権のみを持つべきです。この原則は、ファイルサーバーへのアクセス、電子カルテの各機能、そして物理的な部屋への入室権限など、あらゆる場面に適用されます。
建物の入退室、電子カルテへのアクセス、ファイルサーバー上の操作など、全ての行動がログとして記録されているという認識そのものが、内部の不正行為に対する強力な抑止力となります。
BYOD(私物端末の利用)について、厚生労働省のガイドラインは、私物の端末をクリニックの内部ネットワークに接続することを原則として禁止する方針を推奨しています。患者情報を紙媒体であれデジタルデータであれ、クリニックの外に持ち出すことを禁じる厳格な方針を定め、全職員から署名付きの同意書を取得する必要があります。
従業員が退職または解雇された際には、その従業員が持っていた全ての物理的およびデジタルなアクセス権限を即座に無効化する、正式なプロセスを定めておくことが必須です。
患者様との間で緊張関係が生じた際に、事態を悪化させず、暴力を未然に防ぐための具体的なスキルをスタッフが身につけることは、院内の秩序を保つ上で非常に重要です。
興奮状態または攻撃的な態度を示す患者様に直面した際、スタッフは緊張を緩和させるための言語的・非言語的な対話技術の訓練を受けるべきです。これは対立を鎮めるための臨床的なスキルと言えます。まず自分自身の身を守ることを最優先し、決して一人で対応せず、助けを呼ぶことが挙げられます。自身の逃げ道を確保しておくことも重要です。
相手の手がとっさに届かない距離を保つ、真正面ではなく少し斜め(45度)に立つなどの立ち位置の工夫をまず心がけます。そして、両手を相手に見える位置に保ち、腕を組んだり急な動きをしたりするのを避けるといった、非挑発的な態度を取るようにします。相手の訴えを遮らずに最後まで聴きつつ、時には相手の感情を認める言葉を使うなども選択肢として持つのが良いでしょう。
患者様からのクレームに対応するための、文書化された正式な手順を設けておくべきです。初期対応では、まず話をよく聴き、患者様の不満に共感し、不快な思いをさせたことに対して謝罪します。これは過失を認める行為ではなく、相手の感情を受け止めるための行動です。他の患者様への影響を避け、公の場での対立を収めるために、患者様を別室へ案内することも考えられます。
クレームの内容、患者様の要求、クリニックの対応を詳細に記録することは、内部での検討や将来的な法的防御において重要です。スタッフは、「診療費は結構です」といった、自身の権限を超えた約束を決してしないように訓練されるべきです。その場では情報を収集し、責任者から後ほど連絡することを約束するに留めます。
クリニックのセキュリティ文化は、院長のリーダーシップを直接的に反映します。院長が利便性を優先してセキュリティ手順を頻繁に無視したり、規則を破ったスタッフを指導しなかったりすれば、「セキュリティは実際には重要ではない」というメッセージが組織全体に伝わります。人的なリスク管理で最も重要な要素は、個々の従業員の意識だけでなく、クリニックのリーダーシップによる一貫した姿勢と行動です。
予防の観点でセキュリティを作ることも大事ですが、問題が起きたあとの対応も大切です。重大なインシデントから復帰するための管理体制も考える必要があります。
セキュリティマニュアルは、院内のルールをまとめた単なる書類ではありません。日々の業務の指針であり、非常時の行動基準となる重要なツールです。
セキュリティマニュアルは、全てのセキュリティ関連の方針、手順、役割、責任をまとめた中心的な文書です。一度作成して終わりにするのではなく、日々の業務における生きた指針であり、インシデント発生時の重要な参照資料となります。物理的セキュリティ手順、サイバーセキュリティ計画、データ取り扱い規則、クレーム対応プロセス、インシデント対応計画などを網羅すべきです。
全スタッフはマニュアルの内容について研修を受ける必要があります。マニュアルは、少なくとも年に一度、あるいは新しい脅威が出現したり、新しいシステムが導入されたりした際には、見直しと更新が行われるべきです。
国が定めるガイドラインは、クリニックが遵守すべきルールであると同時に、セキュリティ対策を進める上での道しるべでもあります。
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、医療機関が遵守すべき中心的な規制文書です。これは「概説編」「経営管理編」「企画管理編」「システム運用編」の4部で構成されています。クリニックの経営層は、特に「経営管理編」に書かれている自らの責務を理解しなければなりません。
このガイドラインや関連するチェックリストは、安全管理責任者の任命、堅牢なアクセス制御と利用者認証(多要素認証を推奨)の実装、ベンダーリスクの管理と契約における責任分界点の明確化、サイバーインシデントを想定したBCPの策定と訓練といった、具体的な行動を要求しています。
問題が発生した後の最初の数時間の行動が、被害の大きさを左右します。事前に計画を立てておくことで、パニックを防ぎ、組織的な対応が可能になります。
インシデント発生後の最初の数時間にとられる行動は、被害を抑えるために重要なアクションとなります。事前に定義された計画があることで、冷静さを保ち、統制の取れた対応が可能になります。
計画は、誰が何をすべきかという明確な流れに従いましょう。例えば、ランサムウェアの脅迫文を発見した第一発見者は、影響を受けた端末には一切触れず、直ちに報告を上げるべき責任者に口頭で伝達します。報告を受けた責任者は、影響を受けた端末をネットワークから物理的に切断し、インシデント対応を進めていく必要があります。また、契約しているサイバー保険へのインシデント対応窓口に第一報を入れます。
経営層とインシデント対応チームは、BCPを発動して紙カルテなど代替手段による診療体制に移行します。同時に、専門の調査会社に依頼して原因と被害範囲の特定を開始し、必要に応じて警察、厚生労働省、個人情報保護委員会といった公的機関へ報告します。調査結果に基づき、バックアップからのシステム復旧計画を策定・実行し、インシデントの根本原因を分析して再発防止策を講じます。このようなシンプルなフローチャートが、危機的状況下での統制の取れた初動対応を可能にします。
万が一の事態に備え、金銭的な損害をカバーする保険への加入は、事業継続のための重要なセーフティネットです。
クリニックは、異なるリスクに対応するため、複数の保険商品を組み合わせたポートフォリオを構築する必要があります。医師賠償責任保険は、医療過誤に起因する損害賠償を補償します。補償される限度額や、補償の対象外となるケースを正確に把握しておくことが重要です。
サイバー保険は今や不可欠な保険と言えます。一般的な賠償責任保険では通常補償されない、サイバー攻撃特有の費用をカバーするために設計されています。主な補償内容には、フォレンジック調査費用やシステム復旧費用、事業中断による逸失利益といった自院の損害と、情報漏洩を理由に提訴された場合の訴訟費用や損害賠償金といった賠償責任の両方が含まれます。
火災保険や動産総合保険は、建物、内装、そして高価な医療機器などの「モノ」に対する物理的な損害を補償します。火災だけでなく、自然災害や水濡れ、多くの場合で盗難による損害も補償の対象となります。
堅牢なセキュリティ体制は、個別の製品や方針の寄せ集めでは成り立ちません。物理的、デジタル、そして人的な要素が互いに支え合う統合されたシステムです。
クリニックの開業に伴い、いきなり包括的なセキュリティへの投資は難しいかもしれません。しかし、いずれ患者様やスタッフ、そしてクリニックの運営を守るためにセキュリティを意識しておくことが大切です。すぐではなくとも、いずれ必要になるとしてセキュリティ知識を高めてみるのがオススメです。
引用元:なの花東日本公式HP(https://www.msnw-kaigyou.jp/)
引用元:PHCメディコム公式HP(https://www.phchd.com/jp/phcmn)
引用元:アプト公式HP(https://www.iinkaigyo-navi.net/)
【3社の選定理由】
2022年3月17日時点「クリニック開業 東京」「医院開業 東京」とGoogle検索して表示された59社の中から、本格的な診療圏調査を無料で提供している会社の内、3社を以下の理由により選出。
なの花東日本(メディカルシステムネットワークグループ)…該当企業の中で唯一、開業のコンサルティング費用が無料で、自社でテナント(医療ビル・モール等)を企画開発している。
PHCメディコム…該当企業の中で、医院継承に対応し、最も多くの医療ITシステムを開発している。
アプト…該当企業の中で、23区、23区外(諸島部除く)戸建て物件の紹介数が最も多く、不動産仲介業や建築工事業を行っているため、自由度の高い物件を見つけることができる。