院外処方を前提としてクリニックを開業する場合、患者が処方箋を持ち込む先となる調剤薬局をどのように確保するかは、集患や患者の利便性に関わる重要なテーマです。クリニックのすぐ隣に薬局がある「門前薬局」のほか、同じ建物内に入居する「敷地内薬局」、医療モールに薬局が組み込まれているケースなど、立地の類型はさまざまです。
本記事では、東京でクリニックの開業を検討している医師に向けて、調剤薬局を併設する場合の立地類型ごとの違いと、2026年度の調剤報酬改定で新設された減算制度の影響を踏まえた薬局パートナーの選び方を整理します。なお、院内処方と院外処方のどちらを選ぶかという判断については別記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
患者にとって、クリニックのすぐ近くに調剤薬局があることの最大のメリットは、診察から薬の受け取りまでの動線が短くなる点です。特に慢性疾患で定期的に通院する患者は、毎回の通院負担が小さいほどクリニックへの継続率が上がりやすくなります。高齢の患者や子ども連れの場合はなおさらです。
また、クリニックと薬局が近い位置にあれば、処方内容に関する薬剤師からの疑義照会がスムーズに行われやすく、処方変更や副作用の確認といった情報のやり取りにも時間的なロスが生じにくいという運用上のメリットもあります。患者の利便性を高めることが結果的に再来院につながるため、薬局の配置は開業時の収益設計にも影響する要素です。
クリニックの近くに薬局を配置する形態は、大きく分けて3つの類型があります。
門前薬局は、クリニックの道路を挟んだ向かいや同一ブロック内に薬局が立地するケースです。患者がクリニックを出てすぐに薬を受け取れる利便性がありますが、薬局側はクリニックの処方箋に大きく依存する経営構造になりやすい面があります。
敷地内薬局は、クリニックと同じ建物や同一敷地内に薬局が入居する形態です。2016年の規制緩和以降、保険医療機関と構造的に独立していることを条件に敷地内への併設が認められるようになりました。患者の動線は最も短くなる一方で、クリニックとの経営上の一体性が疑われないよう、賃貸借契約や導線設計に注意が求められます。
医療モール・医療ビル型は、複数の診療科のクリニックと薬局が同一施設内に集まっている形態です。薬局は施設内の複数のクリニックから処方箋を受けるため、特定の医療機関への依存度が分散しやすいという特徴があります。患者にとっても、複数の診療科の受診と薬の受け取りを一か所で済ませられる利点があります。
2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定では、特定の医療機関に立地を依存した薬局経営を是正する目的で「門前薬局等立地依存減算」が新設されました。2026年6月1日以降に新規で保険薬局の指定を受けた薬局のうち、一定の立地要件と処方箋集中率の要件を満たす場合に、調剤基本料から15点が減算されます。
この減算の対象には、都市部で半径500m以内に他の薬局があり処方箋集中率が85%を超えるケースや、医療機関と同一の敷地・建物内に所在し集中率が85%を超えるケースが含まれます。なお、2026年5月31日以前に指定を受けている既存の保険薬局は経過措置として当面の間、対象外とされています。
これから開業するクリニックの視点で見ると、この減算は「自院の門前に新たに薬局を誘致する」際に影響を及ぼします。新規開設となる薬局が減算の対象になると、薬局側の採算が厳しくなり、安定した調剤体制を維持できなくなるリスクがあるためです。薬局パートナーを選ぶ段階で、この制度を踏まえた経営計画を持っている薬局かどうかを確認することが重要です。
調剤薬局の併設を検討する際には、単に物件が近くにあるかどうかだけでなく、いくつかの観点から薬局パートナーを見極める必要があります。
まず確認しておきたいのは、薬局側の経営基盤です。開業地での処方箋枚数の見込みに対して、安定的に運営を継続できる企業体力があるかどうかは、クリニックの長期的な経営にも影響します。複数の店舗を展開し、地域の医療需要に関する独自の情報を持っている薬局であれば、開業後の集患に関する情報共有が期待できるケースもあります。
また、クリニックと薬局の間での処方箋の斡旋や患者の誘導は法令上禁止されているため、独立した経営関係を維持できる契約形態になっているかも確認が必要です。敷地内薬局の場合は、構造的な独立性を担保するための設計や、賃貸借契約の条件について、開業の早い段階から薬局側と協議しておくことが求められます。
こうした薬局の選定や条件交渉は、物件探しや資金調達と並行して進める必要があり、開業準備のなかでも負荷が大きい工程です。テナント型物件の開発を自社で手がけ、薬局の併設までを一体で提案できる開業支援会社を活用することで、薬局パートナーの選定から契約条件の調整までスムーズに進めやすくなるでしょう。
調剤薬局がクリニックの近くにあることは、患者の利便性向上や継続来院の促進という点で、開業後の経営に直結する要素です。ただし、門前・敷地内・医療モール型といった立地類型ごとにメリットや注意点が異なり、2026年度改定で新設された門前薬局等立地依存減算も薬局パートナーの選定に影響を与えます。
当メディアでは、東京エリアでクリニックの開業・経営を支援する会社を調査し、それぞれの強みや特徴をまとめて紹介しています。薬局の併設を含めた物件選びや開業後の安定経営を見据えたパートナー選びの参考にしてください。
引用元:なの花東日本公式HP(https://www.msnw-kaigyou.jp/)
引用元:PHCメディコム公式HP(https://www.phchd.com/jp/phcmn)
引用元:アプト公式HP(https://www.iinkaigyo-navi.net/)
【3社の選定理由】
2022年3月17日時点「クリニック開業 東京」「医院開業 東京」とGoogle検索して表示された59社の中から、本格的な診療圏調査を無料で提供している会社の内、3社を以下の理由により選出。
なの花東日本(メディカルシステムネットワークグループ)…該当企業の中で唯一、開業のコンサルティング費用が無料で、自社でテナント(医療ビル・モール等)を企画開発している。
PHCメディコム…該当企業の中で、医院継承に対応し、最も多くの医療ITシステムを開発している。
アプト…該当企業の中で、23区、23区外(諸島部除く)戸建て物件の紹介数が最も多く、不動産仲介業や建築工事業を行っているため、自由度の高い物件を見つけることができる。