東京でクリニックの新規開業を検討している場合、開業予定地が「外来医師過多区域」に該当するかどうかは、早い段階で確認しておきたいポイントです。該当区域で無床診療所を開設しようとすると、開業の半年前までに行政への事前届出が必要になり、応じ方によっては保険医療機関としての指定に不利な条件が付く可能性があるためです。
この記事では、東京都内で外来医師過多区域の候補とされている医療圏・区の範囲、事前届出の具体的な手続き、届出後に求められる「協議の場」での対応、応じなかった場合に生じる不利益措置、そして該当区域でも開業を実現するための現実的な選択肢まで、実務目線で整理して解説します。
外来医師過多区域は、二次医療圏ごとの人口10万人当たり診療所医師数などを基準に、国が候補区域を提示する仕組みです。東京都内では、以下の5医療圏・17区が国の候補として挙げられています。
一方で、区東部医療圏に含まれる足立区・葛飾区・江戸川区・墨田区・江東区・荒川区などは、現時点でこの候補には含まれていません。
ただし重要なのは、東京都はこれらの区域をまだ正式には指定していないという点です。東京都保健医療局は、国が提示した候補区域をもとに、都としての外来医師過多区域の指定や、地域において特に必要とされる外来医療機能について検討を進めている段階にあります。したがって、上記の区に開業を予定している場合でも、「確定した規制」ではなく「今後正式指定される可能性がある区域」として、都の発表を継続的に確認しておく必要があります。
外来医師過多区域として正式に指定された区域で無床診療所を開設しようとする場合、医療法第30条の18の6第3項に基づき、開業の6か月前までに事前届出を行うことが求められます。
届出の提出先は、区域が特別区(東京23区)であれば区長、それ以外の市町村であれば都道府県知事となります。届出の内容は、開設予定地・診療科目に加えて「地域外来医療の提供に関する意向」など、自院が地域の外来医療にどのように関わるつもりかを示すものが求められます。開業計画を立てる段階で、この6か月という期間を前提にスケジュールを逆算しておくことが実務上のポイントです。
事前届出を受けた行政は、開設予定者に対して「協議の場」への参加を求めることがあります。ここで主に論点となるのは、在宅医療の提供や、夜間・休日診療への対応など、その地域で不足しているとされる外来医療機能を担ってもらえないか、という要請です。
この協議に応じ、地域が求める機能の一部を実際に提供する形で開業できれば、特段の不利益は生じません。一方で、こうした要請に応じない、あるいは協議自体に参加しない場合は、保険医療機関としての指定条件に影響が及ぶ仕組みになっています。
協議での要請に応じなかった場合の不利益措置としては、まず保険医療機関の指定期間が短縮される点が挙げられます。保険医療機関の指定期間は原則6年とされていますが、要請に応じなかった場合は初回で3年に、それでもなお応じない場合は再度の指定時に2年へと短縮される仕組みです。指定期間が短いということは、更新の手続きや審査を、通常よりも高い頻度で受け続けることを意味します。
加えて、令和8年度診療報酬改定では、こうした医療機関について、機能強化加算・地域包括診療加算・地域包括診療料・小児かかりつけ診療料が算定できなくなるほか、在宅療養支援診療所としての届出も行えなくなる対応が予定されています。具体的な点数や適用の細目については、今後発出される告示・通知等で確定するため、開業計画の段階では「これらの算定ができなくなる」という枠組みそのものを前提に据えておくことが重要です。
候補区域内での開業を考えている場合、選択肢は大きく二つに整理できます。一つは、協議の場で示された地域のニーズ(在宅医療や夜間・休日診療など)を実際に自院の診療体制に組み込み、地域に求められる機能を担う形で開業する方法です。もう一つは、開業予定地を候補区域外のエリアに切り替えるという選択です。
どちらの選択肢を取るにしても、判断のタイミングは早いほど選べる幅が広がります。事前届出は開業6か月前が期限であるため、物件選定や資金計画と並行して、遅くとも開業予定日の7〜8か月前には、候補地が対象区域に該当するかどうかの確認と、届出・協議に向けた準備を始めておくことをおすすめします。
外来医師過多区域の制度は、東京都としての正式指定がまだ行われていない段階にあるとはいえ、候補として挙がっている区での開業を検討している以上、事前届出の実務やその先にある不利益措置の内容を早めに把握しておくことが、開業計画を無理なく進めるための前提になります。届出のタイミングや協議への対応を誤ると、指定期間の短縮や各種加算の算定不可といった形で、開業後の経営に影響が及びかねません。
当メディアでは、東京エリアでクリニックの開業・経営を支援する会社を調査し、それぞれの強みや特徴をまとめて紹介しています。外来医師過多区域を踏まえた開業エリア選定や届出準備の進め方を検討する際の参考にしてください。
引用元:なの花東日本公式HP(https://www.msnw-kaigyou.jp/)
引用元:PHCメディコム公式HP(https://www.phchd.com/jp/phcmn)
引用元:アプト公式HP(https://www.iinkaigyo-navi.net/)
【3社の選定理由】
2022年3月17日時点「クリニック開業 東京」「医院開業 東京」とGoogle検索して表示された59社の中から、本格的な診療圏調査を無料で提供している会社の内、3社を以下の理由により選出。
なの花東日本(メディカルシステムネットワークグループ)…該当企業の中で唯一、開業のコンサルティング費用が無料で、自社でテナント(医療ビル・モール等)を企画開発している。
PHCメディコム…該当企業の中で、医院継承に対応し、最も多くの医療ITシステムを開発している。
アプト…該当企業の中で、23区、23区外(諸島部除く)戸建て物件の紹介数が最も多く、不動産仲介業や建築工事業を行っているため、自由度の高い物件を見つけることができる。