クリニックの新規開業準備を進めるなかで、電子カルテの選定は避けて通れないテーマです。しかし近年は、厚生労働省が主導する「標準型電子カルテ」の整備が進んでおり、開業を控えるドクターの間では「今すぐ既存製品を導入すべきか、標準型電子カルテの登場を待つべきか」という迷いが生まれています。
標準型電子カルテはまだ開発・検証の途上にあり、公表されているスケジュールも今後変更される可能性を含んだ「目標」段階のものです。ここでは2026年9月時点で公表されている情報を整理したうえで、新規開業のタイミングとどう照らし合わせて考えればよいか、判断材料となる視点をまとめます。
まず押さえておきたいのが、「標準型電子カルテ」と「電子カルテ情報共有サービス」は別の仕組みだという点です。両者は医療DXの文脈で同時に語られることが多く、混同されがちです。
標準型電子カルテとは、厚生労働省が示す標準仕様に沿って開発される電子カルテ製品そのものを指します。国が定めた基本要件をもとに、複数のベンダーが標準仕様に対応した製品を提供できるようにする取り組みです。
一方、電子カルテ情報共有サービスは、医療機関同士が患者の診療情報を連携・共有するための基盤(インフラ)にあたります。どの電子カルテ製品を使っているかにかかわらず、対応が進めば情報連携が可能になる仕組みであり、標準型電子カルテとは目的も仕組みも異なります。開業準備の情報収集をする際は、この二つを切り分けて理解しておくことが大切です。
厚生労働省は2026年3月31日、「医科診療所向け電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様書(基本要件)1.0版」を公表しました。これは標準型電子カルテの土台となる仕様を定めたものです。
その後の動きとして、厚生労働省の医療等情報利活用ワーキンググループでは、標準仕様に対応した製品を認証するための認証要綱を2026年9月に公開する方針が示されています。そのうえで、認証を受けた電子カルテ製品の提供開始について、2027年4月を目標とする方針も示されました。
ただし、これらはいずれも「方針」「目標」として示されている段階の情報です。厚生労働省の公式ページ自体には、この2027年4月という具体的な提供開始時期は明記されておらず、今後の審議・検証の状況によって前後する可能性がある点には留意が必要です。
クリニックの新規開業では、物件選定から内装工事、機器導入、スタッフ採用までを含めると、半年〜1年程度の準備期間を見込むケースが一般的です。この準備期間と、標準型電子カルテの「2027年4月提供開始目標」を重ねて考えてみます。
開業予定時期が2027年4月より前であれば、標準型電子カルテの提供開始を待つという選択肢は現実的ではなく、開業時点で稼働している既存製品の中から選ぶことになります。一方、開業予定時期が2027年4月前後、あるいはそれ以降になる場合は、標準型電子カルテの提供状況を開業準備の途中で確認しながら判断する余地が生まれます。
ただし前述のとおり、2027年4月はあくまで目標時期であり、確定した供給開始日ではありません。「待てば必ず使える」という前提で開業計画を立てるのではなく、あくまで判断材料の一つとして情報を追いながら、並行して既存製品の比較検討も進めておくのが現実的な進め方といえるでしょう。
当面は既存の電子カルテ製品から選定するケースが多いと考えられますが、その際に確認しておきたい観点を整理します。
なお、特定の製品名・ベンダー名を挙げて優劣を判断するのではなく、上記の観点をもとにご自身のクリニックの診療スタイルや将来計画に照らして検討することをおすすめします。
電子カルテ関連の制度を調べていると、「標準型電子カルテ」の話と、東京都が実施する電子カルテ導入補助金の話が混ざって伝わってくることがありますが、この二つも別の制度です。
標準型電子カルテは国(厚生労働省)が主導する仕様標準化の取り組みであるのに対し、東京都の補助金は、都内で電子カルテを導入する医療機関の費用負担を軽減するための東京都独自の支援制度です。対象となる経費や申請要件、スケジュールは国の標準化施策とは別の枠組みで定められています。東京都の補助金の申請時期や注意点については、別記事で詳しく解説していますので、開業予定地が東京都内の場合はあわせて確認しておくと、資金計画を立てるうえでの参考になります。
当メディアでは、東京エリアでクリニックの開業・経営を支援する会社を調査し、それぞれの強みや特徴をまとめて紹介しています。電子カルテ選定を含めた開業準備全体の進め方に迷った際の参考にしてください。
引用元:なの花東日本公式HP(https://www.msnw-kaigyou.jp/)
引用元:PHCメディコム公式HP(https://www.phchd.com/jp/phcmn)
引用元:アプト公式HP(https://www.iinkaigyo-navi.net/)
【3社の選定理由】
2022年3月17日時点「クリニック開業 東京」「医院開業 東京」とGoogle検索して表示された59社の中から、本格的な診療圏調査を無料で提供している会社の内、3社を以下の理由により選出。
なの花東日本(メディカルシステムネットワークグループ)…該当企業の中で唯一、開業のコンサルティング費用が無料で、自社でテナント(医療ビル・モール等)を企画開発している。
PHCメディコム…該当企業の中で、医院継承に対応し、最も多くの医療ITシステムを開発している。
アプト…該当企業の中で、23区、23区外(諸島部除く)戸建て物件の紹介数が最も多く、不動産仲介業や建築工事業を行っているため、自由度の高い物件を見つけることができる。